第8回日本抗加齢医学会総会

第8回日本抗加齢医学会総会報告と御礼
優秀ポスター演題の発表

2008年6月6日、7日の2日間に渡り「アンチエイジングを科学する」をテーマに掲げ、東京国際フォーラムにて第8回日本抗加齢医学会総会を、21日には市民公開講座を開催いたしました。
特別講演2、招待講演1、教育講演2、会長講演1、シンポジウム58、ワークショップ3 インターナショナルセッション1と、138題のポスター演題、展示企業社数 83社、オプションプログラムとして7日早朝に皇居一周のマラソン大会 「Run for Longevity 」とそれぞれ多彩なプログラムに加え、総会総参加者数 2600名、市民公開講座参加者数900名を数え、盛会のうちに無事終了いたしました。ご参加を頂きました各位に運営者を代表し、心より感謝申し上げます。
演題には、基礎研究から臨床に関する幅広い非常に興味深い演題が多く寄せられ、今後のアンチエイジング医学がサイエンスとして発展すると期待を抱く内容でした。
学会を通じて、アンチエイジングにかかわる医療従事者が益々増え、アンチエイジング医学の目標である「健康増進・QOLの向上、健康長寿」に向けて、それぞれの専門分野の垣根を超え、立場を超えた議論を続けることにより日本の健康長寿社会を支える医学として拡大していくことを期待しています。

白澤卓二

第8回日本抗加齢医学会総会
会長 白澤 卓二


優秀演題賞について
プログラム委員会の審査により、ポスター演題のうち下記20題を優秀演題賞といたしました。
なお、会長賞5題について6日の懇親会で賞状、奨励金が白澤会長より授与されています。
優秀演題賞の発表
(受賞された皆さんと白澤会長)
左から 浦野友彦さん 堀江 哲郎さん 金谷節子さん 白澤会長 栗波 仁美さん 乾 重樹さん

会長賞<最優秀奨励賞><優秀演題賞>
『加齢に伴う脊柱変形を規定する疾患関連遺伝子の探索と同定』
 発表者 浦野 友彦
 東京大学22世紀医療センター抗加齢医学講座・東京大学大学院 加齢医学講座
浦野友彦

会長賞<奨励賞><優秀演題賞>
『骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスにおける過剰活性酸素の筋機能に対する影響』
 発表者 堀江 哲郎
 東京都老人総合研究所 老化ゲノムバイオマーカー
『1076名のDNA損傷マーカー尿8-OHdGと喫煙及び性差の酸化ストレス検討』
 発表者 金谷 節子
 浜松大学健康プロデュース学部健康栄養学科臨床栄養学研究室
『フルバスタチンはアミロイドベータ蓄積を減少させ、酸化ストレスを軽減することで認知機能障害を予防する』
 発表者 栗波 仁美
 大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学講座
『男性型脱毛部毛乳頭細胞における特異的TGF-β1プロモーター活性調節機構の解析』
 発表者 乾 重樹
 大阪大学 皮膚・毛髪再生医学講座

<優秀演題賞>
『男性の健康指標としての、唾液中8OHdGの有用性』 NO.067
 熊本 友香 (帝京大学医学部 泌尿器科)

『大動脈硬化と心血管疾患死亡』 NO.074
 井上 典子 (広島市医師会臨床検査センター)

『Lifespan extension of Caenorhabditis elegans by an antioxidant, platinum nanoparticle』NO.031
 金 周元 (東京大学 新領域創成科学研究科 先端生命化学)

『早期老化モデル動物としての無機リン酸輸送担体過剰発現動物の解析』NO.065
 鈴木 敦詞 (藤田保健衛生大学 内分泌代謝内科)

『動脈硬化危険因子による動脈硬化進展の分子機序の解明』NO.027
 田中 亨 (群馬大学大学院医学系研究科・臓器病態内科学)

『唾液中の酸化ストレスマーカー8-hydroxy-2’-deoxyguanosine (8-OHdG)と歯周疾患との関連について』NO.043
 小松 知子 (神奈川歯科大学・生体管理医学講座・障害者歯科学分野)

『口腔と全身の老化度の比較検討』NO.121
 徳永 淳二 (鶴見大学歯学部附属病院アンチエイジング外来 鶴見大学歯学部口腔病理学講座 仁愛会歯科日吉クリニック)

『境界型糖尿病から糖尿病進展に伴う、血漿中サイトカイン・ケモカインの変動』NO056
 宇野 賀津子 (ルイ・パストゥール医学研究センター)

『閉経期女性のライフスタイル,危険因子と橈骨動脈Augmentation Index』NO.084
 藤井 香 (慶應義塾大学保健管理センター)

『FGF2は細胞内TAZタンパク質量を調節し脂肪細胞分化を刺激する』NO.072
 江田 誉 (東京慈恵会医科大学生化学講座・千曲中央病院整形外科)

『培養自家細胞を用いた皮膚再生治療法の効果検討』NO128
 堀 祐輔 (株式会社TESホールディングス 技術部)

『男性型脱毛症に対するパルセノライドの効果』NO.053
 冨田 哲也 (大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科(整形外科))

『老人性難聴におけるBak遺伝子の役割』NO.088
 染谷 慎一 (東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻)

『生活習慣と体内年齢、酸化損傷度・抗酸化能との統計学的検討』NO.028
 草野 孝文 (アエバ会アエバ外科病院 アンチエイジング・ドック部)

『更年期女性のhot flushの重症度に寄与する生物学的測定法に関する探索研究』NO.136
 石谷 健 (東京女子医科大学)


 

加齢に伴う脊柱変形を規定する疾患関連遺伝子の探索と同定
○ 浦野 友彦、成澤研一郎、白木 正孝、臼井 貴彦、大内 尉義、
  中村 利孝、井上 聡
東京大学22世紀医療センター抗加齢医学講座・東京大学大学院 加齢医学講座
産業医科大学 整形外科
成人病診療研究所
東京大学大学院 加齢医学講座

【目的】加齢に伴う脊柱変形は腰痛の大きな原因であり、高齢者のADLならびにQOLを大きく損なう。本疾患の原因解明は臨床的重要性に加え、関節における抗加齢因子の解明のためにも重要である。今回その遺伝子的素因を明らかにするために、ヒト遺伝子上で脊柱変形に関与する一塩基置換遺伝子多型(SNP)の探索を疾患候補関連遺伝子アプローチにより行なった。
【方法】日本人非血縁閉経後女性434名(平均年齢66.5歳)を対象とした。今までに骨・関節代謝に関与することが明らかにされてきた遺伝子群から、これらの遺伝子上に存在する200SNPに関して、対象者のDNAを用いてTaqman PCR 法により全遺伝子型を決定した。胸腰椎]線写真を撮影し、脊柱変形の各パラメーター(椎間板狭小、骨棘形成、終板硬化)をGenant らの方法に基づき、脊柱変形の進行度を数値化した。年齢補正を行い、数値化したスコアと各SNPとの相関解析を行なうことで疾患関連遺伝子の同定を試みた。
【結果】本探索の結果、IGF-1シグナル受容体である1型IGF-I受容体(IGF1R)遺伝子のイントロン1に存在するSNPが脊柱変形の指標の一つである椎間板狭小化と有意に相関した(p=0.0033)。さらにWntシグナルにおいて受容体として働くLRP5遺伝子におけるアミノ酸変異に伴うSNP(Q89R)が骨棘形成と(p=0.0019)、さらにはWntシグナル応答遺伝子であるWISP1遺伝子における3’非翻訳領域に存在するSNPが終板硬化と(p=0.0069)有意に相関することも見出した。
【考察】今回、我々は新たにIGF1RのSNPが椎間板狭小化と有意に相関することを見出した。近年、IGF1R遺伝子上のSNPは寿命や認知症の発症との相関も報告されており、IGF1RのSNPによるIGF-Iシグナルの変化がヒトでの抗加齢作用において影響を及ぼしている可能性がある。また、Wntシグナル伝達因子であるLRP5とWISP-1が脊柱変形のパラメーターと有意な相関があることから、これらSNPを用いたリスク評価のための遺伝子マーカーの開発やIGF-IならびにWntシグナルを標的とした脊柱変形に対して抗加齢作用を有する物質の開発が期待される。

 

1,076名のDNA損傷マーカー尿 8-OHdGと喫煙及び性差の酸化ストレス
○ 金谷 節子、池谷 昌枝
 浜松大学 健康プロデュース学部 健康栄養学科 臨床栄養学研究室

【目的】酸化ストレスはがん、心臓病、脳血管疾患、糖尿病など生活習慣病に関連する因子である。喫煙と性差よるDNA損傷は異なるかを検討した。
【方法】1,076名の男女ボランティアのビタミン常用者は試験1週間前よりビタミン摂取をカットし、1日尿量を比例採尿器アリコートカップを使い、尿8-OHdGはELSA法、血清アスコルビン酸、血清α-トコフェロールはHPLC法で検査した。1日の食事のORAC値(oxygen radical absoubance capacity)は家計購買調査から1650 ORACとした。統計的検定では性別・喫煙者間はt-test、基本統計量、喫煙と非喫煙はMann-Whitney TestをSPSS10.0Eにより、P<0.05未満を有意とした。
【結果】年齢とともにDNA損傷マーカー尿8-OHdGは増加した(p<0.01、n=1.076)。1,076名中、喫煙者のDNA損傷マーカー尿8-OHdGは12,4±7.0、非喫煙者は11.0±6.6で喫煙と非喫煙者に有意差が認められた(p<0.03)。喫煙者の値が非喫煙者より12.7%高かった。男女の喫煙者では男性の尿8-OHdGは12.4±6.5、女性では11.9±7.4(p<0.03)と性差が認められた。18.5%男性のほうが女性よりDNA損傷がく酸化ストレスに弱い。非喫煙者の男女でも性差が認められた(p<0.01)。13.5%男性が女性よりDNA損傷の値が高かった。
【統括】通常の食事と軽度運動のボランティア1,076名の研究では、1.喫煙は酸化ストレスによる尿8-OHdGを非喫煙者に比べて12.7%増加させる。性差はホルモンの違いによりDNA損傷を18.5%低減させているとみられる。酸化ストレスを軽減して生活習慣病を予防する食事・栄養療法としてエストロジェンの擬似女性ホルモン様作用のあるイソフラボンや抗酸化力の高いORAC食を真空調理法でデザインすることが有用であろう1)。
文献
1)Kanaya S ,Ikeya M ,Matsuda N.,Izumo Y.:Decrease of DNA oxidation damage urinary marker 8-OHdG and urinry8-isoprostane F2-alpha by high-potency antioxidant diet.JCBN2008 in press.

 

骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスにおける過剰活性酸素の筋機能に対する影響
○ 堀江 哲郎、津田 千鶴、石川 慎、野田 義博、桑原 宏朋、川上 哲、
  吉田 朋恵、小澤 祐介、白澤 卓二、清水 孝彦
東京都老人総合研究所 老化ゲムノバイオマーカー
東京農工大学大学院連合農学研究科
順天堂大学大学院 医学研究科

【目的】我々は高齢者における運動機能低下の原因の一つである筋減少症と活性酸素との関係を明らかとする為に、活性酸素の主要な発生源であるミトコンドリアに局在するMn-SODに着目し、その欠損マウスを作製し、解析を行なった。また老年期の運動機能を「食事」によって改善することを目的として、今回作製したマウスにおいて機能性食品因子の大規模な評価系を構築した。
【方法と結果】Cre-loxpシステムを用いて骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウス(M-sod2 KO)を作製した。M-sod2 KOの筋萎縮を調べる為に、老齢(30ヶ月齢)マウスにおいて筋重量を測定した所、対照マウスと比較して筋萎縮は認められなかった。しかし腓腹筋において障害筋繊維が再生している事を示す核の細胞中心への移行-Centralized nucleiが観察され、また筋傷害マーカーである血清CPK活性の上昇が認められた。この事からM-Sod2 KOにおいては明確な筋萎縮は見られないものの、活性酸素による筋繊維の障害が強く起こっている事が示唆された。一方、トレッドミルを用いた走行試験の結果、強制運動能の著しい低下が認められ、また呼吸鎖複合体Uの顕著な活性低下が見られた。骨格筋中ATP濃度を測定した所、対照群と比較して顕著なATP量の低下が見られ、特に強制走行後は著しく減少していた事からM-sod2 KOはATPの枯渇により運動能低下を示している事が示唆された。また、血中乳酸値測定した所、対照群と比較して有意に上昇をしており、呼吸鎖欠損に対する代償的な解糖系の活性化から血中への乳酸の蓄積が起こっている事も示唆された。次にM-sod2 KOのレスキューを試みる為にSOD/カタラーゼ活性を有するマンガン-サレン錯体EUK-8を単回腹腔内投与した所、筋中ATP量と運動能について顕著な改善が見られた。
【結語】骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスは酸化ストレスによるミトコンドリアの機能不全により、ATP合成能が低下して運動機能不全を示した。現在、M-sod2 KOをレスキュー可能な機能性食品因子のスクリーニングを行なっており、その結果についても併せて報告したい。

 

男性型脱毛部乳頭細胞における特異的TGF-β1プロモータ活性調節機能の解析
○ 乾 重樹、中尾 俊史、中島 武之、板見 智
 大阪大学 皮膚・毛髪再生医学講座

我々はアンドロゲンレセプター(AR)発現ベクターをトランスフェクトした男性型脱毛部毛乳頭細胞とヒトケラチノサイトの共培養系を用いてアンドロゲンによって刺激された毛乳頭細胞から産生されるTGF-β1が男性型脱毛の病態形成に重要であることを示した。今回、アンドロゲンによる毛乳頭細胞におけるTGF-β1の発現調節のメカニズムを解析するため、転写開始点から1362bp上流までのプロモーター領域を含むルシフェラーゼレポータープラスミドを作製し、AR発見ベクターとともに男性型脱毛部毛乳頭細胞にトランスフェクトした後、レポーター活性へのアンドロゲンの影響を調べた。その結果、InMの合成アンドロゲンR1881がTGF-β1プロモーター活性を約10倍に増強することがわかった。しかし、この活性の増強はサル腎細胞CV-1細胞、トランスフォームした男性型脱毛部毛乳頭細胞では見られず、培養初期の男性型脱毛部乳頭細胞に特異的な現象であった。様々な長さのプロモーターをつないだプラスミドを作製し男性型脱毛部毛乳頭細胞で同様の実験をしたところ、-1131〜-731と-459〜-323に正の調節領域があり、-1326〜-1127と-735〜-459に負の調節領域があった。-1131〜-731の領域にはアンドロゲン応答性のコンセンサス配列5’ -GCC AGT TGG CGA GAA CAG TTG GCA CGG Gがあり、アンドロゲンによるTGF-β1の発現調節部位である可能性が示唆された。

 

加齢に伴う脊柱変形を規定する疾患関連遺伝子の探索と同定
○ 浦野 友彦、成澤研一郎、白木 正孝、臼井 貴彦、大内 尉義、
  中村 利孝、井上 聡
東京大学22世紀医療センター抗加齢医学講座・東京大学大学院 加齢医学講座
産業医科大学 整形外科
成人病診療研究所
東京大学大学院 加齢医学講座

【目的】加齢に伴う脊柱変形は腰痛の大きな原因であり、高齢者のADLならびにQOLを大きく損なう。本疾患の原因解明は臨床的重要性に加え、関節における抗加齢因子の解明のためにも重要である。今回その遺伝子的素因を明らかにするために、ヒト遺伝子上で脊柱変形に関与する一塩基置換遺伝子多型(SNP)の探索を疾患候補関連遺伝子アプローチにより行なった。
【方法】日本人非血縁閉経後女性434名(平均年齢66.5歳)を対象とした。今までに骨・関節代謝に関与することが明らかにされてきた遺伝子群から、これらの遺伝子上に存在する200SNPに関して、対象者のDNAを用いてTaqman PCR 法により全遺伝子型を決定した。胸腰椎]線写真を撮影し、脊柱変形の各パラメーター(椎間板狭小、骨棘形成、終板硬化)をGenant らの方法に基づき、脊柱変形の進行度を数値化した。年齢補正を行い、数値化したスコアと各SNPとの相関解析を行なうことで疾患関連遺伝子の同定を試みた。
【結果】本探索の結果、IGF-1シグナル受容体である1型IGF-I受容体(IGF1R)遺伝子のイントロン1に存在するSNPが脊柱変形の指標の一つである椎間板狭小化と有意に相関した(p=0.0033)。さらにWntシグナルにおいて受容体として働くLRP5遺伝子におけるアミノ酸変異に伴うSNP(Q89R)が骨棘形成と(p=0.0019)、さらにはWntシグナル応答遺伝子であるWISP1遺伝子における3’非翻訳領域に存在するSNPが終板硬化と(p=0.0069)有意に相関することも見出した。
【考察】今回、我々は新たにIGF1RのSNPが椎間板狭小化と有意に相関することを見出した。近年、IGF1R遺伝子上のSNPは寿命や認知症の発症との相関も報告されており、IGF1RのSNPによるIGF-Iシグナルの変化がヒトでの抗加齢作用において影響を及ぼしている可能性がある。また、Wntシグナル伝達因子であるLRP5とWISP-1が脊柱変形のパラメーターと有意な相関があることから、これらSNPを用いたリスク評価のための遺伝子マーカーの開発やIGF-IならびにWntシグナルを標的とした脊柱変形に対して抗加齢作用を有する物質の開発が期待される。

 

フルバスタチンはアミロイドベータ蓄積を減少させ、酸化ストレスを軽減することで認知機能障害を予防する。
○ 栗波 仁美、里 直行、篠原 充、竹内 大亮、武田 朱公、
  島村 宗尚、荻原 俊男、森下 竜一
大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学講座
東京大学 先端医学開発講座
大阪府立急性期総合医療センター

【目的】アルツハイマー病(AD)に対してスタチンが効果的であるとする報告がなされているが未だそのメカニズムが明らかではない。我々はフルバスタチンを用いてAβに起因する認知機能障害モデルマウスにおける効果及びメカニズムを検討した。
【方法】6週齢のオスのddYマウスの側脳室にAβ(1-40)を投与する認知機能障害モデルマウスを用い、脳室にAβを投与する2週間前からフルバスタチン5mg/kg/日の経口投与を行なった。脳Aβを定量するため脳抽出物のELISAを行なった。認知機能評価のためwater finding taskを行い、またフルバスタチンのメカニズムを調べるためDHE染色、ChAT染色を行なった。
【結果】Aβ(1-40)投与3週間後のwater finding taskではフルバスタチン前投与群で有意に改善を認めた。Aβ(1-40)投与後にフルバスタチンを投与した群では行動試験で有意な改善は認められなかった。またシンバスタチン前投与した群でも行動試験では改善は認められなかった。フルバスタチン前投与群では有意に脳Aβの低下がみ認められた。NEPおよびIDEの量および活性に各群間では差がなかった。Aβ(1-40)投与により海馬歯状回での酸化ストレスの上昇およびコリン作動性ニューロンの活性低下が見られたが、フルバスタチン前投与群では酸化ストレスの低下がみられ、コリン作動性ニューロン活性は保存されていた。シンバスタチンでも同様の検討を行なったが、シンバスタチン前投与群ではコリン作動性ニューロンの減少および海馬歯状回での酸化ストレスの増大が認められた。
【総括】フルバスタチン前投与により脳Aβの蓄積の抑制がおこり、酸化ストレスの抑制、コリン作動性ニューロンの保持、Aβ(1-40)に起因する認知機能障害の改善が認められた。このモデルにおいてはフルバスタチン前投与がAβの排出に関わっている可能性が考えられ、スタチンの種類や投与時期が重要があることが示唆された。